VRが恐怖症の治療に一役立とうとしている。恐怖症の多くが過去のトラウマにより、現実の些細な出来でも過敏に反応する症状を生み出す。
人間の脳は、嫌なことは記憶の奥底に忘れるよう、仕舞い込んでしまうため、治療には長い時間をかけて、カウンセラーが心の奥の闇を探る必要があった。
VRで解決するのは、過去のトラウマを臨場感たっぷりの3D仮想空間で再現し、過去のトラウマを現在の自分の心で再認識させることだ。
例えば、交通事故にあった経験があり、交通量の多い道路を見ると、突然、当時の記憶を蘇せて震えてしまう人は、
安全な自宅やカウンセリング用の別室で、交通量の多い道路を見せて、見せている世界を現実のおかれた安全な状況から再認識してもらう試みを行う。
高所恐怖症の方は、VR上で高い場所を見てもらい、安全な部屋の中で、恐怖感を緩和させていく。
過去のトラウマを解消するのが難しいのは、その記憶を安全に呼び戻すことであり、それが臨場感あふれる仮想空間により、以前と比べ格段に時間とコストが減ったのだ。
これらの取り組みを積極的に行う企業がアメリカのシリコンバレーにある。新興企業のリンビックス社だ。
ニューヨーク・タイムズでは、このリンビックス社のVRを使用したカウンセリングを紹介し、患者が回復するまでを記事にしている。
本治療は、患者を4年後に追跡調査したところ、恐怖症の症状が大幅に減った状態を保っていた人の割合は90%、症状が全く出ていなかった人の割合は65%に上ったという。
今後の利用拡大が期待できそうなVRの新活用を今回はご紹介しました。日本でもすぐに採用できそうなくらい、低コストで準備ができるそうなのですが、医学的に根拠のあるカウンセリング方法として早期に学会などで認められて欲しいものです。
さらに詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
▼安全な治療室の中、VRで恐怖と向き合う最新の不安障害治療|ニューズウィーク日本版
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8134.php