仮想現実感(VR)、バーチャルリアリティーの取り組みに必死なのは、何もゲーム業界だけではない。アパレル業界、インテリア業界、不動産業界など、注目している業界はたくさんある。ただ、熱い視線をおくっているのは、民間企業だけではない。自治体なども、熱い視線をおくっているのが、VR市場だ。今回、ご紹介するのは、国ぐるみで進行しているVR動画について。地方自治体の観光客誘致のためのVR動画制作だ。
NGTなどで有名な新潟県。新潟県南あわじ市では、「VR」(バーチャン・リアリティー)を公開。都会で独りで食事を摂る寂しさをVR(バーチャル・リアリティー)で解決するもので、市は「動画で田舎の温かみを知ってもらい、実際に足を運ぶきっかけになってもらえれば」と話している。
【バーチャン・リアリティー】
http://www.awajikoku.com/
北海道美唄市では、地方自治体の観光プロモーションにおけるVR活用を行っている。観光地をVRで「下見体験」ができるアプリで、美しい自然の風景や温泉、さらには焼き鳥屋の店内の様子などをVR体験することができる。
【VR観光体験~北海道美唄市~】
http://www.city.bibai.hokkaido.jp/vr/
この他にも、地方の観光名物をVRによってPRする自治体は数多い。なぜ、VRを活用するのだろうか。やはり、新しいものへの積極的な展開が功を奏しやすいからかもしれない。
しかも、2017年5月からは、経済産業省がVR制作費の一部を助成金として肩代わりする「先進コンテンツ技術による地域活性化促進事業費補助金」の公募を開始した。これによって、VRによってPRする、VRによるPR動画の展開をしていく動きはどんどん加速すると思われる。
VRコンテンツはそもそも国内からの観光客向けでもあるのだが、その最終的な狙いは海外から観光客だ。言葉ではなく、映像であれば、海外のインバウンド顧客に対しても、観光地や観光物をPRしやすいという考えからであろう。インバウンド需要を見込んでのVR動画の考え方は、非常にわかりやすい。2020年の東京オリンピックを期に観光立国として、東京だけでなく地方自治体をPRし、地方創生にはずみをつけようと考えている。そもそも、国が、2020年には、年間4,000万人の観光客を目標としているのだから。特に爆買い観光客として有名な中国人のVRHMD出荷台数は2020年までに2000万台を超える予測されおり、関連マーケットの規模も300億ドル(約3.6兆円)を超えるという予測も出てているため、先進的な取り組みの相次ぐ自治体で導入が進められた。
地方自治体がVRコンテンツに取り組むメリットは、地域の産業や特産物等の魅力を分かり易く多くの人に伝えることだけではない。
VRの導入に踏み切った地方自治体の担当者は、
「ビジネス客及び市民向けのチラシやパンフレットの数が多くなり過ぎてしまい、利用者に分かりにくいものになっているという課題を認識していた。そこで、そのようなチラシ・パンフレットの情報を集約し、効率的に情報を提供できるツールが開発できないかと考えていた。」
「緊急雇用対策の予算を活用することで、地域の実情に基づき、雇用機会の創出に取り組みながらも思い切った技術導入ができた。」
VRの技術的な側面は、東京のWEB制作関連会社に委託するケースが多いものの、地元と大学と協力し、VRコンテンツを運用するケースもある。最新技術に取り組むことにより、今後、地元での雇用を生み出す機会にもなる。
”VRコンテンツを作る” → ”観光客が多く来る”
これだけに終わらないと思えるのは筆者だけではないだろう。