VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)を活用したマンションの販促は、日本ではまだまだ普及が進んでいないのが現状だ。中国では、見学が困難な中国国外のリゾート物件や投資物件で、徐々に閲覧ユーザを増やしている。
今後の不動産業界でのVR発展は、一同、リスクを気にして踏み込めないのが現状かと思う。そんな中、いち早くVRをマンション販促で活用した大和ハウスの実績データが出たので、記載する。7月5日に『日経 ITPRO』が報じた大和ハウス工業のインタビューでは、VRでマンション販促を行った効果に確かな感触が伺える。
「VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)販促でマンションの成約率が10ポイント上がった。導入効果は小さくない」。大和ハウス工業の西綾子マンション事業推進部販売推進部販売支援グループ主任は満足げに話す。「とにかくお客様の反応が違う。手応えを感じる」(西主任)。
販促効果が出たのは、同社が手掛ける沖縄県豊見城市の分譲マンションで、メインターゲットユーザを”比較的安価な地方のマンションを都市部の在住者”とし、購入希望者にいかに遠方のマンションでの生活するイメージをさせるか、その対策にVRを活用した。
全2棟204戸のうち、2016年9月から始まった2棟目の販売でVRを使ったところ、成約率(歩留まり)が1棟目の約25%から35%程度まで高まったという。
このような成功事例は、中国の不動産会とも似ている。中国では、検討物件を現地に行くことで無駄な時間を浪費せずに、時間を有効に使えるとして、ユーザや投資目的の企業に人気だ。
海外不動産に対する中国本土からの投資は、近年では10.7億ドルに膨れ上がっているという調査報告もある。自分の知らない土地で物件を探すのは、誰にとっても苦労が伴う、VRで先に、訪問先/購入先のエリア絞り込みが出来れば、VRの利用価値は十分すぎるくらい高いのだ。
マンション販売会社も、現地の内見のために時間を割く必要がなく、ユーザの購買決定プロセスを一層スピードアップできるため、人件費を削減できるメリットがある。
今回、大和ハウス工業が行った施策は、物件だけでなく、生活環境もVRで体験できるようになっている。「すぐそばにある沖縄の暮らし」をテーマに、メインターゲットである50~60代の夫婦を想定。那覇空港に到着後、夫婦でビーチで散歩、や¥海の家での食事を楽しむ1日目の様子と、子世帯とバーベキューやマリンアクティビティを楽しむ2日目の様子をVRヘッドマウントディスプレイを用いて疑似体験することができる。
このVR制作コストに関しては、担当者インタビューでは下記のように語っている。
VR販促のコストは約300万円で、制作費が大半を占める。PCやタブレット向けのコンテンツなら作り慣れた外部業者が多く、「100万円以下でも相応のものが作れる」(同)のに比べれば、やや割高感がある。
VRの価格は企画を組むとコスト高になる一方、物件の内見に絞るとことで大幅にコストを下げることも可能。どこまでやるか、どこが効果の分岐点かは、今後の実績データにて判別していきたい。